粟島神巳待祓あはしまじんみまちはらひ

人ひと津つ靈みたま、少彦名すくなのかん夫それ已巳つちのとみとは、愼つつしみを本もととする身みを云いふ。身待みまちは普あまねく人ひとを祭まつる事ことぞ。人ひとは則すなはち、万物ばんもつの長おさなれば、是これを祭まつるを實眞道みまちと云いふ。然しかり、運命うんめい良長りやうちやうとして薬力やくりき粟島あはしまの神慮しんりょに叶かなふ。謹請きんじやう再拜さいはい再拜さいはい掛麻かけまくも賢かしこき少彦名尊すくなひこなのみことの宇津うつの廣前ひろまえに恐おそれみ恐おそれみ申まうす。抑そもそも巳待之神みまちのかみと奉申まうしたてまつるは高皇產靈之尊たかみむすびのみことの御子みこにして、一千五百いっせんごひゃく柱はしらの末すゑの男子みこ、少彦名尊すくなひこなのみこと也なり。御長みたけ小作ちひさく御座ましまして、粟あはを御船みふねとして紀州きしう灘佐なぎさ之の郡こほりに着つき給たまふ。依之ことよって、粟島あはしま大明神だいみやうじんと祭奉干いはひたてまつる時とき、大國神だいこくじん大巳貴命おほあなむちのみことと力ちからを合あはせ、御心みこころ一ひとつにして、天下あめがしたの蒼生人あをひとぐさの病やまひを癒治いやし給たまはんと醫術くすしの道みちを始はじめ給たまふ元祖ぐわんそ也なり。其その巳み壽ことぶき永ながく安やすらかにして、孫まごの孫まごの八十續やそつづきまで不絶事たへざることを守まもり給たまふ神かみ也なり。殊ことに、父ちちは天あめにして、母ははは地つち也なり。氣脈氏きみゃくうじをば父神ちちのかみより、請骨肉うけこつにくをば母神ははのかみより受うく故ゆゑに、土野つちのとの身みとは申まうし奉たてまつる也なり。今いまに至いたるまで、万民ばんみん己おのが已みの病やまひを此神このかみへ祈いのり、身健みすこやかに福さいはひを奉待まちたてまつる故ゆゑ身待之神みまちのかみとは申まうす也なり。神力じんりき神妙じんみやうの大おほひなる功徳いさほしを厚あつく敬うやまひ深ふかく信しんじて、病難びやうなん奇難きなんを祓はらひ除のぞきて、子孫しそん長ながく常磐ときは堅磐かきはに守護まもり福さいはひ給たまへと謹つつしみ謹つつしみ恐おそれみ恐おそれみ申まうす。